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2015年6月

2015年6月 7日 (日)

フェルメール

5月26日(火)国立新美術館「ルーブル美術館展 日常を描く-風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄」へ行った。
フェルメールの「天文学者」があるので、行こうと決めていた展覧会である。

クエンティン・マセイス「両替商とその妻」とか、ティツィアーノ「鏡の前の女」とか、シャルダンの作品とか、印象的な作品が散見され、また古代ギリシャの陶器(八重洲のブリジストンで行く度に魅了されている)がやや唐突な感があったが、そこに描かれた風俗が接点で出陳されたようで、近年フェルメールが出展される際の、オランダ・フランドル絵画へ位置付ける展覧会が一般的な中で、フェルメールが核なのは間違いないが、飽くまで風俗画がメイン・テーマとしてあり、時代、地域ともオランダ・フランドル絵画以外が入り、フェルメールはその中の一作品としてあるという、ちょっと毛色が異なるものだった。

美術の鑑賞は好きで、若い頃から美術館へはよく足を運んでいる。
ここ2,3年は余程のものでない限り行かないが、行ったとしてもまた余程でないと図録は買わない。

それが半ば習慣化しつつあり、今回のそれも会場で内容を確認し、掲載論文も余り読みたいと思うものでなかったので見合わせるところだが、フェルメールが、しかも長年目にしたいと願って来た「天文学者」があるので、実物を見たばかりの目で印刷の色合いを見るとあまりの落差に愕然としつつも、購入することにした。

「天文学者」といえば対の作品として「地理学者」があり、'00(平成12)年大阪市立美術館でそれを見て以来の念願である。
それからフェルメールの来日展へは随分足を運んだ。

以下、足跡を整理してみる。

1「フェルメールとその時代」大阪市立美術館'00(平成12)年 4/4~7/2
・聖プラクセディス 1,655 '14~国立西洋美術館へ寄託 NO.1(本展図録作品リスト番号)
・リュートを調弦する女 1,664頃 メトロポリタン美術館   NO.18
・天秤を持つ女 1,664頃 ワシントン・ナショナル・ギャラリー NO.16
・青いターバンの少女(真珠の耳飾りの少女) 1,665 - 6頃 マウリッツハイス美術館(デン・ハーグ) NO.22
・地理学者 1,668 - 9頃 シュテーデル美術研究所(フランクフルト) NO.29

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2「フェルメール「画家のアトリエ」 栄光のオランダ・フランドル絵画」東京都美術館 '04年(平成16年)4/15~7/4
・画家のアトリエ(絵画芸術) 1,665 - 6頃 ウィーン美術史美術館 NO.25

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3「フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展」 国立新美術館 '07年(平成19年)9/26~12/17
・「牛乳を注ぐ女」 1,658 - 9頃 アムステルダム国立美術館 NO.9

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4 「フェルメール展 光の天才画家とデルフトの巨匠たち」 東京都美術館 '08年(平成20年)8/2~12/14
・マルタとマリアの家のキリスト 1,655頃 スコットランド・ナショナル・ギャラリー NO.2
・ディアナとニンフたち  1,655 - 6頃 マウリッツハイス美術館(デン・ハーグ) NO.3
・小路 1,658 - 60頃 アムステルダム国立美術館 NO.7
・ワイングラスを持つ娘 1,659 - 60頃 アントン・ウルリッヒ美術館(ブラウンシュバイク) NO.11 
・リュートを調弦する女 1,663 - 5頃   → 1
・ヴァージナルの前に座る若い女 1,670頃 (個人蔵) *
・手紙を書く婦人と召使 1,670頃 アイルランド・ナショナル・ギャラリー、ダブリン NO.33 **

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*「フェルメールとその時代」展図録作品リストには入っていない。以前から真作かどうか議論が分かれていたが最新の調査で真作と見なされるに至った。
**本展は当初「絵画芸術」の展示が予定されていたが、作品の保存状態が芳しくないという理由から中止となった。その代わりに特別出展という形で本作が展示された。

5「フェルメールからのラブレター展」 Bunkamuraザ・ミュージアム  '11年(平成23年)12/23 - '12年(平成24年)3/14 
・手紙を書く女 1,665頃 ワシントン・ナショナル・ギャラリー NO.20
・手紙を書く婦人と召使   → 4
・手紙を読む青衣の女 1,663 - 4頃 アムステルダム国立美術館 NO.15

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6「マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝」 東京都美術館 '12年(平成24年)6/30 - '13年(平成25年)9/17
・真珠の耳飾りの少女   → 1
・ディアナとニンフたち   → 4

図録は購入せず

7「ルーブル美術館展」 国立新美術館 '15年(平成27年)2/21~6/1
・「天文学者」 1,668 ルーブル美術館 NO.28

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大阪市立美術館「フェルメールとその時代」展図録作品リストにはフェルメールの作品として36点が掲げられている。
この中にも真作かどうか議論がある作品もあるようだが、'08年の東京都美術館「フェルメール展」の「ヴァージナルの前に座る若い女」を加えるとフェルメールの現存する全作品数は37点ということになる。

来日した作品によっては展覧会間の重複もあり、私が直接目にしたフェルメールは16点になる。
上のとおり所蔵先は世界に分散していて、各所へ赴いて全作品を制覇した日本人もいるそうだが、大変な難事業である。

ところで、'00(平成12)年以降の来日展で私が行かなかったものは6回あり、目にしなかった作品は

・恋文
・窓辺で手紙を読む女
・レースを編む女
・真珠の首飾りの女
以上の4点で、来日した作品は20点に及ぶ。

今回の整理で、自身のサプライズがあった。
'08年の東京都美術館「フェルメール展」の図録巻末の乙葉哲氏の文章を読んでいて、危うく読み過ごして仕舞う処だったが、「あっ、これは図録がある!」と済んでのところで目を止めた。
頭の片隅にうっすらと記憶が残っていて、書棚へ死蔵されていたものを出して確認してみた。

するとあった。'87年(昭和62年)の国立西洋美術館での「西洋の美術 その空間表現の流れ」である。
この時「手紙を書く女」が来ていた。

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この図録を改めて開いてみると、古代(ギリシア、ローマ)、中世、イタリアルネサンス、北方ルネサンス、17・18世紀、19世紀および20世紀と章立てして、全時代にわたり粒揃いの作品を網羅していて、フェルメールもその中の一作品以上の主張はしていないように思える。

現在の私のフェルメールの原点は'00(平成12)年の大阪の展覧会であるが、今回のレビューにより、それ以前のフェルメールの来日展の来歴が確認でき、30代に上野で「手紙を書く女」を見ていたことがわかったという、思わぬ収穫もあった。

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