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2015年12月22日 (火)

静嘉堂文庫美術館「金銀の系譜」-2

早や冬至である。
雲は多いが寒さは左程でもない。陽光にも恵まれ、過ごし易い日だったと云えよう。
朝日新聞に連載中の漱石「門」から一時離れ、谷崎潤一郎の「蓼喰う虫」を新潮文庫で読んでいる。
中盤から終盤の入りあたり、要(かなめ)が義父とその妾のお久と共に淡路島へ渡り、島の人形浄瑠璃小屋へ見物に行く件り。

9~11章にあたる部分だが谷崎の筆が自在、奔放で筵で覆われた仮設小屋の喧騒が活写されていて、読んでいて感じた楽しさはこれまで経験した事のないものだった。
浄瑠璃には不案内の身なので巻末の大変丁寧な解説を頼りにしながら読み進めたが、出し物の名がこれでもかと言うほど列挙されているのも、永井荷風が「西遊日誌抄」の中でニューヨークのメトロポリタン歌劇場他へ夜毎通い詰め、ヴェルディ、プッチーニ等のオペラを浴びるように観ていた件りが思い出された。

閑話休題。

受付で料金を払うとチケットではなくパンフレットを渡された。

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ロッカーへバッグとコートを入れ、展覧会の紹介映像を見た。
トイレは地下、と云うより多分美術館が斜面へ建てられているのでロビーが2階みたいな気がした。

正直、内部を見た印象はリニューアルされた感じがしない。

ロビースペースに並ぶように「曜変天目茶碗」(国宝)と「油滴天目茶碗」(重要文化財)がケースに収められて展示されている。
いきなりと云う感じで、粋なサプライズだ。

ここは窓外からは下界が展望でき、好天だったので暖かい陽光が室内に一杯に射し込んで来ていて素晴らしい空間だ。

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「曜変天目」の方は小ぶりで、藤田美術館のものと斑紋が大分異なっている。
甲乙付けがたいというのが正直な処だが茶碗の大きさは藤田美術館のものに慣れた目で見るとやや物足りなさを感じる。

「油滴天目」の方も器の形は自分の好みではなかった。

展示室へ入る。
入口に展示品目録が置かれていた。最近行った展覧会ではめずらしく英語版の目録も置かれていた。

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目録掲載点数は40品目。すべて静嘉堂所蔵で、展示期間が前後期に限定されたものがあるので目にしたのはこの日34点だった。
展示場はあまり広くない2室だけなので、自ずから点数は限られて来る訳だが、どれも見ごたえのある佳品揃いで、時間もかからず、疲れないで鑑賞出来た事は或る意味よかったと思う。

目玉の宗達「源氏物語関屋・澪標図屏風」(国宝)

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右隻の源氏十六帖「関屋」
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左隻の源氏十四帖「澪標」

パンフレットを見ると修復に3年を要し、亀裂、絵具の剥れ等の修理や縁に隠れていた部分が現れるなどの成果があった由。
画題の選定、画面構成や意味する処の深さ等、奥深い作品であるが、大画面で近ずいて見ると散漫な感じがした。
遠くから全体を把握しつつ見ると、構図の緻密さ、金地に緑の対比が鮮やかで秀逸な作品であると思った。

印象に残ったのは第2室にあった抱一の「波図屏風」。こちらは銀地に墨で波頭を荒々しく描き、抱一のイメージにない作風だが、見るほどに魅力の虜になって来る不思議な作品だ。
千葉市美術館の4年前の「江戸琳派」展の図録を見るとMIHO MUSEUMの「波図屏風」があった。(NO79)
前者は文化期、後者は文政後期で抱一晩年の作との事だが、作風は異なるものの共に光琳の「波濤図屏風}(メトロポリタン美術館)に触発されたものの由。

光琳の作品は3点。
「鶴鹿図屏風」がエントランス(前室)を飾る。金地に桜と楓が装飾的にデフォルメされて描かれ、この作は伝光琳とされているが、光琳らしい華やかな作品である。
第2室にあった「住之江蒔絵硯箱」(重要文化財、後期展示)。
京都博でも見た「舟橋蒔絵硯箱」(国宝)をモデルとしているとの事だが、光悦に比して地味で渋い作りだ。

光琳の実家は京都の老舗呉服商「雁金屋」で後水尾天皇の后、東福門院和子の御用達、とパンフレットにある。
後水尾天皇といえば修学院離宮を建造し、また桂離宮にも深く関わる人物である。
光琳の育った時代、環境が偲ばれる。

光悦の作品は「草木摺絵新古今和歌巻」。宗達の金銀泥下絵の上にしたためている。
京博で観た「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」(重文)を思い出した。
光悦は寛永の三筆の一人で、今回の展覧会は残る二人、松花堂昭乗、近衛信尹(のぶただ)の書も揃って見ることが出来た。

第2室出口のそばに鈴木其一「雨中桜花紅楓図」。
千葉市美術館の「江戸琳派」展図録に同類型の作品が載っている。(雨中菜花楓図(NO231)。こちらの方が手が込んでいて、枝に雨に耐える蓑虫、落葉する楓も入っている。雨線は静嘉堂が右からに対し、こちらは左から、角度が異なる雨足があり、雨が細い線で構成されている。)
作品から受ける印象はどちらも同じで静謐なものだ。

其一と云うと、京博でも観た「夏秋渓流図屏風」(根津美術館)が素晴らしい。
これも千葉市美術館の図録に載っている。(NO209)

原羊遊斎の作も2点。
1点は、前室でもある出口右側にさり気なく置かれていて印象的だった。(片輪車蒔絵入子広蓋)
(つづく)

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