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2016年10月15日 (土)

題名のない音楽会「武満徹特集」の補足など

先般報告した表題について、その後確認した事などを追加したい。

1.鈴木大介が「ヘイ・ジュード」を演奏中に画面下へテロップで流れた武満のコメントについて
その後、鈴木の武満作品集のCDを聴き、ブックレットの解説を見てみた。

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他の収録曲についても同じだが、映画音楽のように他者による編曲の手が入ったもの以外、すべて武満自身のコメントで構成されている。
読んでみると放送のテロップは、ここにある武満のコメントを元に要約、というか部分引用したものであることがわかる。
序でに、といっては何だが、福田進一の武満作品のアルバムも久し振りに聴いてみた。福田は武満のメモリアルアルバムを2枚出しており、武満のギター作品は勿論、例えばブローウェルによる追悼曲をはじめ、武満にちなむ作品をも収めた意欲作だ。

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解説は福田自身によるもので、「ギターのための12の歌」を見ると武満のコメントも全文が引用されていて、その出典が「初版の楽譜」であることを明示している。
全音楽譜出版社の全音ギターピースがそれで(下写真)、裏側に「編曲ノオト」として掲載されている。

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「クラシック・ギター(特に日本で)の世界が、・・・閉ざされた状況にあるのは、限られたレパートリーを・・・上手に演奏するだけの趣味に陥ったからだろうと思います。・・・その地点に停まるものであれば、音楽はけっして生きたものとはなりえません。」と1,977年に書いた武満に対し、武満が逝った1,996年に録音されたアルバムの「12の歌」のライナーノーツにおいて福田は「私たちギタリストは武満さんの希望どおり“生きた音楽”をするように進歩しただろうか?」と述懐している。
少なくも私には現在の日本のギター界は、世界レベルのトップギタリストを擁し、世界のギター界をけん引する一端を担うまでに成長して来ていると思える。充分に武満を満足させるに足る“生きた音楽”を奏でているのではないだろうか。

2.「らららクラシック」で紹介されたスナップショットについて
前回ブログを書いた時点では八ヶ岳か軽井沢かのいずれかわからなかったが、これもその後、辻井伸行のカーネギーホールデビューを控えた時期のドキュメント('11.12/30放送のNHKスペシャル「旋律よ’殿堂’に響け~ピアニスト辻井伸行 自作曲に挑む~」)の中に出て来て、八ヶ岳高原音楽堂であることがわかった。ここでは辻井の自作品のみによるコンサート('11.8/5)の模様が紹介されていた。

3.付け足し-「森の中で」をめぐって
鈴木大介の武満作品集は、「森の中で」を冒頭に据え、ソロ全作品を収録する意欲作だ。

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福田進一は武満メモリアルアルバムvol.1を'97年にリリースして実に11年後の'08年にvol.2を発表したが、やはり「森の中で」を冒頭に据え、この作品を録音するのに満を持した理由を深い思い入れと含蓄に富んだ解説に記している。

「森の中で」は3曲から構成されるギター独奏曲で、その第1曲「ウェインスコット・ポンド」には唯一副題が付せられていて、曰く、「コーネリア・フォスの絵画から」とある。
「(アメリカの)友人から送られて来た絵葉書に印刷された美しい風景画の下に、小さな活字で、Wainscot Pondとあった。」と武満自身が解説している。

これについて、興味深い情報を以下に記したい(*)。
「友人」は、アメリカのルーカス・フォスというベルリン生まれの作曲家、ピアニスト、指揮者だった人で、コーネリアはその夫人でやはりベルリン生まれの画家だった。
夫妻はロス・アンジェルス在住時の1,956年にグレン・グールドと知り合い、親交を重ねて行ったが、やがてグールドとコーネリアは恋愛関係に陥り、1,967年から二人はトロントで実質的な婚姻関係の生活に入った。1,972年にコーネリアは関係にピリオドを打ってルーカスの許へ戻る、というもの。

(*)「グレン・グールドの秘密の生活」(「音楽の友」'07年10、11月号)から

本記事(*)の訳注に「ウェインスコット・ポンド」の由来が記されているが、「森の中で」をピアノ作品と誤記している。
また武満の'96年のグレン・グールド賞受賞へも触れ、武満~「森の中で」~コーネリア・フォス~グールドという円環に感慨を覚えている。
武満が受賞した'96年のグレン・グールド賞は第4回にあたり、創設されたグールドの死の翌'83年の第1回から13年目になる。武満は当時4人目の受賞者となったが、発表の2月6日の丁度2週間後の2月20日に他界したのだった。
そしてこの年9月25日トロント・カナダ放送センターのグレン・グールド・スタジオで授賞記念コンサートが催されている(*2)。

(*2)翌'97年8月31日にNHKFMで「グレン・グールド国際音楽賞の武満徹」としてオンエア。90分カセットテープ2本にエア・チェックした。

コンサート会場となった放送センターのグレン・グールド・スタジオという施設名に奇異な感を受けるが、演奏後の聴衆の拍手の響きからして通常の大ホールのようだ。グールドは'64年4月10日のロスでのコンサートを最後に以降録音、放送のみで演奏活動した人だが、授賞記念コンサートは通常の形態で行っている。
ギター作品も入っており、「12の歌」から「サマータイム」、「ヒア・ゼア・アンド・エブリホエア」の2曲を地元カナダの女流レイチェル・ゴークが演奏している。

今年は武満が没して20年の記念の年。光陰矢の如し。

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