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2017年6月

2017年6月10日 (土)

箱根・熱海-6(最終回・MOA美術館その2)

Fは展示室1から3があり、ここが今回の特別展示スペースとなっている。しかし展示室2の中央には常設展示作品の野々村仁清「色絵籐花文茶壺」(国宝)の専用展示スペースがあった。

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この一作のための専用空間いわば指定席になっていて、上部からルーバー付きのLED照明だろうか、穏やかな光線が照射され、作品を見る者の興奮を鎮めてくれる。東博などでは、人がどっと押し寄せるので到底作品を鑑賞するような環境下にない状況が常態化している事を思えば、ここは鑑賞の理想的条件が整っている。

愚痴ついでに云うと、東博の特別展では夏の暑い時でも入館待ちの行列に炎天下で延々と並ばされるような過酷な試練に耐えねばならない。それだけでなく、一番人気作品には何時間待ちとか信じられない行列が出来て、とてもでないが心穏やかにしていられない場と化してしまっている。2年前の「鳥獣戯画」展、3年前の台北故宮の「翠玉白菜」など、それを目当てに足を運んだものの、うんざりして結局見ずに帰ってきた苦い思い出があり、最近の東博へは良い印象を持っていない。

展示室1の最奥折り返し点にケースへ収められていたのが(伝)本阿弥光悦「樵夫(きこり)蒔絵硯箱」(重要文化財)。雄壮、ダイナミックな図柄で、琳派のイメージとやや異なる印象の作品だ。なお本作は東京国立博物館「大琳派展」(平成20(’08)年)へ出品されている。

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他に光琳「水葵蒔絵螺鈿硯箱」も展示されていた。本作も「大琳派展」出品作。

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下は光悦「花卉摺絵新古今集和歌巻」。下絵は金銀泥で藤、竹等を摺っている。

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2年前に京都国立博物館で見た光悦筆、宗達画「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」(重文)を思い出した(「琳派京を彩る」展→Ref'15.11/26)。本展へもMOA美術館は3点出品している。

下は(伝)琳「秋草(あきくさ)図屏風」。

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抱一を連想させるが、光琳の方が男性的で、対して抱一は繊細である。

左隻左下に「法橋青々光琳」の署名と「方祝」の落款がある。

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下:酒井抱一「雪月花図」(重要美術品)。やはり「大琳派展」出品作。

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Fは常設展示。2Fから下りて来て、まず「阿弥陀如来及び両脇侍坐像」平安時代(重文)と出会う。向かって左が「勢至菩薩」右が「観音菩薩」。

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後は仏教経巻や「星曼荼羅残欠」、「諸尊図像」、「仁王経法(にんのうきょうほう)図像」(すべて重文)といった貴重な図像が展示されていた。これらは昨年秋に行った東寺の宝物館で見たものに類似している。東寺は撮影禁止だったので、ただ見たというだけで具体的な記憶は残っておらず、今回MOA美術館の展示をカメラに収める事が出来たのは極めて有益だったとつくづく思う。→Ref'16.12/19

次の展示室5は近代日本画作品。

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右から、橋本雅邦「琴棋書画」、菱田春草「鯉魚」、川合玉堂「鵜飼」、速水御舟「青麦」、竹内栖鳳「夏鹿」。栖鳳は6曲2双の大作。

間仕切りされた展示室5のもう一方は空いていて、恐らくここに「紅白梅図屏風」が展示されるのだろう。

展示室6は現代人間国宝の工芸作品等が展示されていた。

以上MOA美術館でこれ以上望み得ない環境で心ゆくまで展示作品を鑑賞して幸福感を味わえた。

(終わり)

箱根・熱海-5(MOA美術館その1)

MOA美術館を訪れるのは今回が初めてである。一年前の5月に熱海へ来た時はリニューアル工事中だった。

MOA美術館は尾形光琳「紅白梅図屏風」を所蔵する美術館として夙に有名で、実物を目にしたいとはかねての念願だったが、それはいまだに叶えていない。

「紅白梅図屏風」は門外不出の作品で(多分そうだと思う)、見るにはここへ来るしかない。

光琳「紅白梅図」は毎年2月のみの公開とハードルが高く、行くなら公開中と思いつつも時期的な制約もあって、ずるずる今日に至り今度初めての美術館来訪となった次第。

前回最後に記したように翌513日、14日に「紅白梅図屏風」の特別公開があり、たった一日違いに今回は涙を呑んだ訳だが、先ずはMOA美術館来訪を果たせた事に満足したい。

因みにMOA美術館のMOAとは創立者の岡田茂吉のイニシャル+Association(協会?)の意味との事。

かんぽの宿フロントでMOA美術館へのアクセスを聞く。と、開催中の特別展のチラシと割引券をくれた。

昨日下って来た十国峠へ向かう道を登り、熱函道路に合流する三叉路を過ぎてすぐ、案内看板のある所で右折し狭いアップダウンのある道をしばらく走ってたどり着いた。

熱海観光協会の観光ガイドマップからも熱海市街の道路は迷路のようで、分かりにくいので上のルートを教えてくれたのだろう。打って変わってMOA美術館は高台の一角にゆったりとしたスペースを確保している。

入り口は2カ所のようだが我々は駐車場から最寄りの3階入り口から入った。

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左側から入ってすぐチケット売り場がある。65才以上は\200割引となり、割引券は必要なかった。3Fはエントランスロビーで、直進して左に折れエレベーターへ向かう途中に何気なく置かれていたオブジェのような展示物にいきなり足が止まる。

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説明文はなく、ただそれが「空心塼(くうしんせん)」といい、中国前漢時代のものだとしか書かれていない。見たとおり装飾的な図形が幾何学的に反復して描かれていて、その玄妙な雰囲気の虜になってしまった。

今思うとこれをカメラへ収めるにあたって許可を取り付ける事をしていなかった。ここは通路で、展示室の中ではない。よっていちいち確認を取る必要はないと独断の下にシャッターを押してしまったのだった。

これは結果的には問題なかった。2Fへ降りてスタッフに撮影について確認したところ、展示室内においてもフラッシュなしならば、撮影はOKとの事。ただし他館および個人所有の展示は撮影不可である。

美術館でこの寛大さは経験がない。唯一昨年3月末に行った国立歴史民俗博物館のみである。そしてカメラに収められる事が計り知れぬメリットをもたらしてくれる事を知った。

「空心塼」へ話を戻し、調べてみたら粘土を焼成したタイルのようなもので、中国古代の建築材料だそうだ。「塼」は何種かあり、「空心塼」は焼成タイルを箱形に貼り、柱状で中空になった漢代の墓の材料との事。

1、 Fが展示室で2Fには立派な能楽堂もある。

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開放的なメインロビーである。左に海と熱海市街を展望できる。正面が展示室入口。

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メインロビーからの眺望。直下は「ムア・スクエア」。ヘンリー・ムーアの「King and Queen」がある。 

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かんぽの宿でもらったチラシ。「琳派の美と光琳茶会の軌跡」。

展示室入口を入りすぐ掲示されていたあいさつ文に、昭和60(’85)年の開館3周年記念に光琳屋敷を復元、光琳茶会を発足、以降毎年2月に開催して今日に至り、各席において展観された光琳および光悦、宗達、抱一等の作品を展示しその軌跡を顧みる、とある。

これによっても明らかだが、MOA美術館は琳派を中心とした絵画、工芸および仏教美術、書跡、陶磁器といった日本を中心とした中国をも含む東洋美術を所蔵している。

所蔵作品は国宝3、重要文化財66を含む約3,500点に及ぶ。

これまでこのブログで取り上げた藤田美術館、大倉集古館、静嘉堂文庫美術館と比較しても遜色のない規模だ。→<'15.12/26>藤田美術館のコレクションの中核を成す藤田傳三郎が数奇者だった事もあり、藤田美術館に最も近い美術館かも知れない。この中では静嘉堂文庫美術館の所蔵規模が最も大きいが、MOA美術館の展示環境が最も理想的と言えるのではないか。

(続く)

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