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2018年1月

2018年1月 9日 (火)

ウイーン・フィル・ニューイヤー・コンサート2018

2018年が明けた。
今年もウイーン・フィル・ニューイヤー・コンサートを視聴することが出来た幸福を噛みしめている。
指揮はリッカルド・ムーティ。1941年生まれ()なので今年は77歳となるわけだが、やや太目気味ながらムーティの指揮ぶりは年齢を感じさせないスタイリッシュで優雅でかつエネルギッシュで、このブログへ記録するようになってから今回が最も魅了された。
例年ご愛敬でどこかにジョークが入るのだが、選曲にもよるのか今年のムーティはひたすら格調高く指揮をした。
なおムーティは1993年の初登場以来、今回が5回目のニュー・イヤー・コンサートとなり、前回の2004年から14年振りと久々の登場である。

)クラシカルギターのジョン・ウイリアムスと同年になるわけだ。

手元に2005年のウイーン・フィル来日公演の録画DVDがあるが、指揮はムーティ。この時は64歳だったが、やはり華麗かつダイナミックな指揮ぶりでサントリーホールの聴衆を魅了していた。なおコンサートマスターは2016年に退団したライナー・キュッヒル、次席はライナー・ホーネックだった。二人のファースト・ネームが同じなのが面白い。またヴァイオリン・パートに今年のNHKにゲスト出演したウイーン・フィルのチェロ奏者へーデンボルク直樹の兄、和樹の姿もあった。

キュッヒルは昨年ギタリストの福田進一とデュオCDをリリースした。福田がライナー・ノートへ寄せたコメントで、「再スタートの共演者として選ばれたことに驚き」以外言葉がない、と正直に述べているが、福田の高いポテンシャルを改めて認識させる快挙であったと共に、どういうコネクションでこのセッションが実現に至ったのか大変興味を覚えたことが記憶に新しい。

今年のコンサートマスターはフォルクハルト・シュトイデ。次席はホセ・マリア・ブルーメンシャイン、2016年に退団したライナー・キュッヒルの後にコンサートマスターとして入団した人だ。(→2017.1/10

ニュー・イヤー・コンサートの前に放送された特集番組で印象深かったのは、ウイーン・フィルが使用している楽器(ヴァイオリン)についての紹介の部分。団員が使用するのは楽団所有のもので、ウイーン製。概ね1800~1940年頃の製作のものを使用している由。そしてコンサートマスターはいわゆる名器を弾いているらしい。
ライナー・ホーネックはストラディバリウス「シャコンヌ」、1725年製とのこと。ちなみに所有者はオーストリア銀行らしい。

来年の指揮者はクリスティアン・ティーレマン

以下プログラムのメモを記す。
2018年はウイーンの建築家オットー・ワグナー没後100年、そして1918年第1次世界大戦終結と共にハプスブルク帝国が崩壊して100年となり、それに因む映像が挿入されている(○印)。
下の記号は凡例だが、今年は初登場の曲が紹介されなかった。あったのにマークしなかったのか、実際になかったのかわからない。
選曲は基本的にウイーン・フィルが行っているようだが、ムーティに相応しい、優雅かつ格調高いプログラムだった。

◎映像挿入
○2018年のアニバーサリー
△バレエ映像
(伊):イタリア(ムーティ)に因む曲
第1部
1.ヨハン・シュトラウス : 喜歌劇「ジプシー男爵」から「入場行進曲」
2.ヨーゼフ・シュトラウス : ワルツ「ウィーンのフレスコ画」op.249◎
映像:オーストリア国立図書館の天井のフレスコ画。王宮の一角にあり、書物がうず高く納められた書架が並ぶ広大な空間の高い天井へ豪華絢爛たるフレスコ画が描かれている。
文学博物館の興味深い資料映像、アウグスティーナ閲覧室も紹介されている。
3.ヨハン・シュトラウス : フランス風ポルカ「花嫁探し」op.417
「ジプシー男爵」のアリアを用いている。
4.ヨハン・シュトラウス : ポルカ・シュネル「浮き立つ心」op.319
5.ヨハン・シュトラウス(父) : マリアのワルツop.212
6.ヨハン・シュトラウス(父) : ウィリアム・テル・ギャロップop.29b(伊)
ロッシーニの序曲のマーチから入る。今年はロッシーニ没後150年。

第2部
7.フランツ・フォン・スッペ : 喜歌劇「ボッカッチョ」序曲 (伊)
ウイーン風の優雅な序奏とロッシーニを思わせる軽快かつ明るいアレグロから成る。
8.ヨハン・シュトラウス : ワルツ「ミルテの花」op.395◎
ミルテは祝いの花。生誕160年のオーストリア皇太子ルドルフとベルギー王女ステファニーの結婚式で演奏された。
映像:今年創設300年のウイーンの磁器工房。装飾に花をあしらった白磁器をはじめ、カラフルで、華やかな、見事な磁器の数々が画面に繰り広げられる。
9.アルフォンス・チブルカ : ステファニー・ガヴォットop.312○△
皇帝一家専用の駅舎「ホーフ・パビリオン」。設計はオットー・ワグナー。
ドーム付きの白壁のシックな建築で、開口部の枠の緑が目に鮮やかだ。また駅舎内は皇帝が使用しただけに、ホールの壁面の装飾、大きな壁画、床は総絨毯と、絢爛豪華。ドーム天井には円形の明かり取りを幾何学的に配置し、中心部からシャンデリア風の照明を吊り下げている。
10.ヨハン・シュトラウス : ポルカ・シュネル 「百発百中」op.326
150年前ウイーンで開催された射撃の国際大会の舞踏会のために作曲された。射撃の音は大太鼓、ティンパニで。
11.ヨハン・シュトラウス : ワルツ「ウィーンの森の物語」op.325◎
チター奏者(バルバラ・ライスター・エブナー(女性))が入る。
作曲されて150年になる。この作品は2014年にも演奏されている(バレンボイム)。このブログへニュー・イヤー・コンサートを綴り始めた年だが、それ以来で重複するのはこの曲だけである。
映像:ウイーン郊外からの市街遠望。ブドウ畑。エリーザベトの礼拝堂。マウエルバッハ修道院。ハイリゲンクロイツ修道院。
導入部分に長目の、そして最後の2箇所にチター独奏が入る。アップで映し出された楽器を見ると、張られている弦は多いが、ギターのようにフレットが打たれているのは奏者側の5本のみでほとんどその部分で演奏している。その他の弦は開放弦のみを時に弾弦しているようで、あとは倍音を響かせて音を豊かにしているのかも知れない。音量的に会場にどの程度響いていたか?
12.ヨハン・シュトラウス : 祝典行進曲op.452
ヨハンと交流のあったフェルディナント1世とイタリア公女の結婚にあたり作曲された。
1893年6月初演。
13.ヨハン・シュトラウス : ポルカ・マズルカ「都会と田舎」op.322
ウイーン園芸協会開催の演奏会のために作曲された。
前半は都会、中間部は田舎の生活を鮮やかに対比的に描写。とテロップにあったが、それほど明確な対比には聞こえなかった。3部形式というには前半の再現が短かすぎて、最後はコーダというのか、短いが華麗な終結部で終わる。
14.ヨハン・シュトラウス : 「仮面舞踏会」のカドリーユop.272(伊)
「仮面舞踏会」はヴェルディのオペラ(1858年ローマで初演)。ヨハン・シュトラウスとヴェルディはお互いを尊敬し合っていたそうだ。
恐らくは原曲の旋律を組曲のように緩急交えて構成している。
昨年のブログに書いた「カドリーユ」の注(→2017.1/10の注を参照)を念頭に聴き直してみると、確かに6曲から成っている。
1急速2軽快かつ伸びやか。ABAの3部形式。3ロンド形式(ABA‘CABA’)4軽快かつ洒脱5諧謔的、そして6フィナーレABA(2回目のAはアッチェレランド)という風に聴いた。
15.ヨハン・シュトラウス : ワルツ「南国のばら」op.388○△(伊)
南国はイタリアを指す。
演奏前に映し出された花々の中で、黄色の薔薇の花びらにテントウ虫のようなものが付いていた。
どのような意味合いなのか?
映像:エッカルツァウ城(ハプスブルク帝国終焉の場所)。ここでカール1世が退位を宣言し、600年以上の帝国の歴史が終わった。ウイーン・フィルはパトロンを失い存続の危機に陥るが、団員の内外での積極的な活動と聴衆の支持により、以来自主運営で今日に至る基盤を築いてきたのだそうだ。
豪華な宮殿で繰り広げられるダンサー達の踊りは、みずみずしく、しなやかで、生命力に溢れており、若さの素晴らしさを感じた。
16.ヨーゼフ・シュトラウス : ポルカ・シュネル「短い言づて」op.240
「短い言づて」とは新聞の投書欄の名前の由。
ウイーン・ジャーナリスト協会の舞踏会のために作曲された。業界ごとの舞踏会がウイーンの伝統で、現在に至っているそうだ。
アンコール
1.ヨハン・シュトラウス:ポルカ・シュネル「雷鳴と電光」op.324
本曲も作曲されて150年。芸術家協会の舞踏会のために作曲された。
ムーティとウイーン・フィルの演奏は大変に洗練された上質なもの。
2.ヨハン・シュトラウス:「美しく青きドナウ」op.314◎
ムーティの合図でウイーン・フィルの新年の挨拶。
映像:ドナウ川とその流域の美しい景観。
参考:’15年ニューイヤー「美しく青きドナウ」を参照(→2015.1/12その(2)
3.ヨハン・シュトラウス(父):「ラデツキー行進曲」op.228

(完)

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