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2019年12月23日 (月)

「京都・奈良の旅’19」-10(志賀直哉旧居)

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道標から分岐する坂道。新たな道標があり、この道が「下の禰宜道(しものねぎみち)」だと分かる。「ささやきの小径」とも言うらしく、鬱蒼とした森を抜ける坂道だ。

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程なく「志賀直哉旧居」へたどり着く。周囲は古めいた土塀が連なり、歴史を感じさせる閑静な住宅地だ。
北向きの表門をくぐり、玄関から入り、階段の隣の受付で料金を払う。

小林秀雄が滞在していたという「江戸三」の「縁由の間」を2年前に見たが、小林を奈良へ呼んだのが志賀直哉だったようだ。(リンク→2017年11月30日 )小林の奈良滞在は昭和3年初夏から約1年とのことなので(*)、志賀の高畑邸宅が建設中の頃に相当するわけだ。

(*)2017年7月27日付朝日新聞夕刊「都ものがたり」による。今般旧居でGETした「志賀直哉旧居の復元」(呉谷充利編著)(A)の年譜では昭和3年5月~4年3月までとあり、志賀邸の完成直前に奈良を去ったようだ。

年譜を見ると谷崎潤一郎ほどではないが、生涯を通じて転居を繰り返していることが分かる。
1912(大正元)年に尾道で「暗夜行路」の原形「時任謙作」の執筆を開始させている(29才)。この旧居もかつて訪れたことがある。
その後、松江(この時、大山登山)、京都(結婚)、群馬県赤城山、千葉県我孫子(「暗夜行路」の大半を執筆)そして1925(大正14)年から奈良へ移り(42才)、この高畑自邸は1929(昭和4)年4月から1938(昭和13)年4月までの9年間(「暗夜行路」完成(54才))を送り(46~55才)、その後東京、熱海、そして東京渋谷というように目まぐるしい。
熱海へ転居した1948(昭和23)年、今は博物館となっている当時旅館だった熱海の「起雲閣」で撮影した谷崎潤一郎、山本有三との写真を見たことがある。(リンク→2016年6月12日
志賀の熱海時代は谷崎と同時期でもあり、谷崎は奈良の志賀邸を訪問もしているようで、生涯を通じて交流があったようだ。谷崎著「文章読本」が、模範例として志賀「城之崎にて」の文章を引用しているのが印象的である。

上の(A)の弦巻克二という人の文章に、志賀の奈良への転居理由への言及があって、妻君の妊娠に伴い当時の京都の住居が手狭になってきたことと、奈良在住の友人からの誘いの声(その中に菅原明朗の名があったのは意外だった(*))が契機となったということのようだが、志賀が追求した「自然と人間との調和」、その模索の過程で京都、奈良での東洋美術体験が大きく影響していたという背景へも触れている。

(*)永井荷風作「葛飾情話」の作曲者として記憶していた。上演された1938(昭和13)年は奇しくも志賀が奈良から東京へ転居した年である。

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狭い階段を上がる。2階は2間のみ。
これは書斎。南向きの部屋だ。昭和12年3月にこの部屋で「暗夜行路」の最終章結びの大山の夜明けが書かれ、作品が完結した記念すべき場所。

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書斎の隣の客間。床の間の観音像の写真は、谷崎潤一郎から贈られ、当時はここに置かれていたようである。本旧居の見学者のコメントにより現在は早稲田大学会津八一記念館にあるとのこと。

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1階の書斎。(A)に志賀の「私の書斎」からの引用がある。(P.30)若い頃は気が散らない北向きがよかったが、年を取り寒さが苦手となって夏以外はもっぱら2階を使ったようである。

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1階の書斎隣の茶室。

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サンルーム。南は大きな板ガラスで存分に採光し、さらに天井中央は大きなトップライトとなっている。奈良学園のパンフレットに床材として特注の瓦(塼(せん))が敷かれている、とある。中国古代に生れ漢代に発達、日本へは飛鳥、奈良時代に伝来した煉瓦、タイルの一種の由。熱海のMOA美術館で「空心塼」を見たことがある。(リンク→2017年6月10日

閉館の午後5時ぎりぎりまでの1時間余滞在し、静かな落ち着いた雰囲気に浸り、心が浄化された。「暗夜行路」は青春期に読んだが、筋は覚えていない。これを機に再読してみようと思った。

奈良ホテルへは最短(と思われる)ルートで戻った。旧居前の道を西下、県営高畑駐車場前の道路を横断して裏道に入り、奈良町天神社、瑜伽(ゆうが)神社前を時間がなかったので素通りし、R169に面した奈良ホテルの坂道前にたどり着いた。

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(続く)

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